「服従の心理」を読んで、ロシアのウクライナ侵攻について考えさせられた

服従の心理」ーS.ミルグラム(河出書房新書,2012)

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概要

1 権威の下では、人々はどんな残虐な命令も遂行する。

2 複数の要因によって服従度合はコントロールできる。

3 そもそも人が服従する性質を持つのは、生存に有利だから。

 

 

本書は、ナチスドイツが実施した大量虐殺のロジックを、アメリカのイェール大学の実験室で解明していく本となっています。

 

「人はなぜ残虐になれてしまうのか?」といった問題提起に対して、膨大な実験データから答えを探っていくという内容でした。

 

そして、この内容は今ウクライナで起きていることにも通ずるものがあると感じます。

 

 

以下に、興味深かった内容を整理してみます。

 

 

本実験では、被験者が残虐なこと(無抵抗な人に電気ショックを与える)をするよう、イェール大学教授から命令を下されます。

 

ここで被験者は、電気ショックを与えることは、科学知見の収集のために絶対に必要だと教授から聞かされています。

 

一方で、無抵抗な実験体(市民)は電気ショックのレベルが上がるにつれて、絶叫するようになり、実験を中止してくれと懇願し始めます。

 

すると、被験者は実験継続を指示するイェール大学教授と、実験を中止したがる人との間で板挟みになります。

 

 

多くの方は、市民の絶叫が聞こえた時点で、実験を中止すると思うのでは無いのでしょうか?

 

しかし、実際は殆どの被験者が、実験体が死亡するレベルまで電圧を上げ続けました。

 

 

これは現在ウクライナで起こっていることと同じではないでしょうか。

 

倫理に反すると理解しているのに、ロシア兵はウクライナへの攻撃を続けます。

 

 

また、本実験によると、ロシア兵も無感情ではないことがわかります。

 

電気ショックを与えていた被験者は、かなりの緊張状態であったようです。

権威者への「服従」と「反逆」の間でストレスを感じていたのです。

 

 

ロシア兵は、ストレスを感じながらも、残虐な行為を続けてしまうのです。

 

それは、「正当化された権威に逆らうこと」が非常に難しいからです。

 

 

ヒトは非力な存在ながらも、組織化することで、動物界の頂点に君臨しました。

言い換えれば、組織化できないヒトは、これまで淘汰されてきたのです。

 

現在存在しているヒトは、正当な権威に対して逆らえないよう進化してきたのです。

 

 

ロシアは今、自身が正当な権威であるとアピールするために、国内外に向けて強烈なプロパガンダを行っています。(これは、ナチスドイツと全く同様の手法です。)

 

権威の正当性が強調され、ロシア兵はより一層命令に背くことができなくなるのです。

 

この本を読むと、ロシア兵を憎む気持ちは無くなります。

悪いのは命令を下すボスだと理解できるからです。

 

 

どうすればウクライナの問題が収集するのか、答えは出せませんが、

ウクライナで起こっていることをより深く理解できた本書に感謝です。

非常に勉強になりました。

「料理の四面体」を読んで料理の楽しさに目覚めた理系独身男子

料理の四面体ー玉村豊男(中公文庫,2010)

料理の四面体 (中公文庫) | 玉村 豊男 |本 | 通販 | Amazon

 

概要

1 すべての料理は火・水・空気・油の4要素で説明できる。

2 世界中の料理には共通点がある。

3 料理の四面体を理解すれば、レシピのレパートリーが無限大になる。

 

 

 

感想

本書では、世界中の料理を分析することで、料理の基本原則を明らかにする試みがなされています。

 

基本原則・・・すべての料理は、火・水・空気・油の4要素から成り立っている。

 

この基本原則に則れば、フランス料理のメインに出される牛肉と、日本の定食屋の生姜焼きがほとんど共通のものであると理解ができると著者は主張しています。

 

たしかに本書を読めば、料理を単純化して理解することができるようになっています。

 

事実、本書を読んだあと自炊をするようになりましたが、生姜焼き・てりやき・ミネストローネなど、作り方を想像すらできなかった料理をレシピ無しで作ることができるようになりました。

(というよりは、原則に従って適当に料理をしていたら、それらに似た味の食べ物が出来上がった)

 

世に出回るレシピを覚えるのは、数学の公式を丸暗記するようで、非常に効率が悪い。

最低限の理論だけ把握し、自ら導き出すのが良いのでは?

 

と理系の私は感じました。

 

本書を読んだあとは、料理をするのが楽しくなりました。

自分で考えて料理をつくるのは、ものづくりのような楽しさがあるのです。

 

そんな楽しさに気づかせてくれた本書に感謝。